ブランデーを飲みながら思いを寄せるキッチン

今日はめずらしく一日中休みだった。

こういう日は滅多にないので、もう13年使ってるTUMIのナパレザーのコンピューターブリーフを磨いて黒く戻したり、ヌーディのデニムを初めて洗ってみたり、クローゼットの服を完全に冬服に替えたりしているうちに昼になった。

自宅で昼メシ作って食ってから、リビングのソファで座って読んだのがこれ。

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なんていうか、この人って俺の中では日本で一番文章が上手い人だと思ってる。カッコつけてなくて自然なんだけど感情の流れに沿って書かれてるような文章でさ。すごく女性的で。読んでいると、文章のところどころで昔に感じたささやかな感情や景色を思い出してしまう。

 

「夜はときとして、私たちがひとりであることを思い出させる。銭湯からの帰り道、父も母もいるのにひとりぼっちだと感じた、あの幼い日の気持ちは、夜というものがの持つ本質だったような気がする」

 

とか、なんかため息が出てきた。こんな風に文章かけたらすごいなあ・・・って思いながら、自分のヘタクソな文章を思い出して絶望的な気持ちにすらなるよ。たった4歳しか違わない作家だけど、すごいなあとしか思えない。すごいっていうのが、いわゆるすごいじゃなくて、文章を紡いでる織機のようなものの静かで規則正しい動きに、心が動くっていう感じかな。

 

夕方、乾いたデニムを触ったら秋の風で冷たくなっていた。ゴワゴワした生地を眺めてみると、膝の裏にくっきりとハチノスの当たりが出ていた。

日が陰っていくキッチンでコーヒーを淹れて、いつものようにブランデーを飲みながら夕食を作ったよ。

今、俺を受け入れてくれる人を思いながら、そして同時に、去っていた人のことを思い出しながら。

何もしない秋の休日はそんな風に、しかし誰とも話さず過ぎていった。