文句言う客は糞。俺の子分が正しい。子分以外は死ね。

実は風俗店でも、普通の会社員でも、人が集まって仕事をするところはどれも似たようなもんだよ。

優秀でスタッフに好かれる上司がいれば、無能でスタッフに馬鹿にされる上司もいる。スタッフが不満だらけで愚痴が多い職場もあれば、スタッフが前向きに明るく仕事してる職場もある。労働時間が長すぎて休みがないくせに収入が少ない職場もあれば、適切な労働時間で相応の収入が得られている職場もある。

どれも風俗でもある話なんだよ。人が集って誰かがリーダーをすれば、どこでも同じ状況になる。特に風俗は女性の世界だからね。ボスの態度のとり方をちょっとミスるだけで店自体が崩壊しかねない。

 

結局ね、俺思うんですが、「情」を理解できないポンコツ感受性のボスには俺もついていけない。それが風俗嬢ならなおさら。

たとえばさ、風俗って客との関係で理不尽なことが多すぎるわけ。正直まともなやつは風俗使わないだろ。客の9割は、馬鹿丸出しか、利口ぶった馬鹿か、どちらか。無神経な態度取れるやつか、風俗嬢にすら嫌われたくなくてビクビクしながらいい人ぶる無能か、どちらかとも言える。まあどっちでもろくでもねえわけ。

すると、客の中にはセコいやつもいてさ、風俗嬢にさえクレーム言い出すやつもいる。やれ時間に遅れただの、やれ態度が悪いだの、やれ本番嫌がっただの。風俗嬢本人にウジウジ言うわ、店に電話かけてきて受付の女性にグダグダ言うわ、俺の気持ちはどうなる、俺の立場はどうなる、俺の時間をどうしてくれる、俺の期待をどうしてくれる、とにかくうぜえんだ。たいてい酔っ払ってるのもあって、電話で怒鳴り散らす。

たしかにさ、客だけが悪いんじゃないよ?嬢も人見てテキトーな態度取ったっていうのもあるだろう。カスな客には露骨に顔に出やすいからね。もちろん、それは接客業としてあるべき態度では・・・ない、たしかに。

 

でも俺は、そんなクレームの電話がかかってくるような嬢が事務所に戻ってきた時、いつもかけている言葉があったよ。

「大変だったな」そして「心配するな、俺に任せろ」

もちろん、客の言い分も正しい部分だってあるだろうさ。でも、俺は絶対に嬢を責めないと決めていた。どんなにクレームがあったとしても。俺は客のクレームは信じないし、一切参考にはしない。記録にも記憶にも残さない。

そんな客との諍いで一番堪えてるのは嬢本人だからね。当たり前だろ。言われなくても分かってることだよな。一番悔しいにも嬢本人だ。

俺は、そこを理解してるぞっていう姿勢は必ず見せるようにしていた。これ見よがしに媚びる必要はない。でも、客への文句があるなら俺が聞いたし、愚痴があるのも聞いた。ただ、大変だったなとか、心配するなとか、ぶっきらぼうに俺は言うだけ。

絶対に本人を責めないと決めていた。そしてその客は店にとって迷惑客としてすべてNGにした。他の嬢も一切つけなかった。要するに出禁にした。客は理不尽だと言い、ネットの掲示板でも騒いだがどうってことない。金払わなきゃ女も抱けねえクズ男は他にもゴマンといるわ。

 

俺は、そこのところの情をないがしろにして、「キミの接客態度はプロじゃない」とかそういう一般論というかお説教というか、そういうこと言う馬鹿にはなりたくないと思っていた。

 

プロとして、シビアで実務的であろうとすればするほど、俺は現場で戦うやつを100%を庇うと決めているだけだ。客の意見は申し訳ないが必要ない。顧客目線なんて無価値。俺のスタッフが100%正しい。正しくなくても、正しい。

もちろん、それには条件はある。それは俺というボスに無条件に従っている限りの話だ。当たり前だろ。俺の子分だから、親分の俺が守ってやるっていうだけの話。俺に意見してくるなら勝手に死んでしまえと思ってる。知らん。蹴るわ。

 

これ、俺が20歳の頃、所属していた店で社長がいつもそうしてくれたんだよな。俺は気が短くて口汚かったから、かなりクレーム起こした。ガラの悪いおっさんが乗り込んできたこともある。でも社長は、俺のことだけ信じてくれて、俺がたとえ嘘をついていたとしても俺を庇ってくれた。そして俺が悔しいと思っていることを理解してくれているのかは知らないけど、こう言った。

「しーんぱいするな!アキラ!次がんばれ!その客は糞だ」

そして落ち込んでる俺に高そうなウイスキーをグラスに入れてくれて、俺はストレートで一気に飲み干した。喉を熱いのが落ちていった。

「メシくってんのか?今どんな女と暮らしてる?」社長はどうでもいいことを俺に聞き、いつも以上に笑った。

俺は、この社長についていこうと思ったよ。そんな夜のゲスな仕事でもさ。

社長に責められなくても、どうせその夜は俺は悔しくて眠れないんだから。でも社長がそうしてくれたから、次の夜の出勤には俺はまたエネルギーが復活していた。

その社長も、俺に良くしてくれたのは、俺がきっちり子分だったからだよ。

 

俺を庇ってくれた当時の社長も、スタッフを庇った俺も、現場の具体的な仕事の内容なんか知らない。スキルもない。知識もほとんどない。現場にいないんだから。でも俺は100%庇うというのがボスの役割だと思ってたな。

 

もちろん、ビジネスはそんなに甘くないとか、厳しく責任を追求するとか、顧客目線でどうこうとか、クレームに感謝するとか、カイゼンとか、そういう意見もあるだろうさ。

でも俺にとってはそれはすべて糞。どうでもいい。会社員であっても、部下のことを庇えない上司なんている意味ないだろ。そもそも。

すくなくとも、部下を庇ってから責任とか事情を聞いていけばいい話でしょ。

俺のいた低学歴低学力のゲスな世界では、文句言う客は糞、俺の子分は最高。子分守れないボスは死ね。それだけの話。底辺のやつらがゲスに金稼ぐ世界ではそんなもんで十分上手くいく。

クレームなんか感謝しねえよ。クレーマー死ね。

 

もう少し、自分の群れを意識して大切にする気持ちってあったほうがいいぜ。