現場作業員のミッションに無関心でいると

最近、大昔の知り合いと久しぶりに偶然出会った。同世代の女性で、俺が会社員だった時の同僚。俺が会社を辞めたのは20年近くも前のことなんだが、その同僚は今年の夏までその会社で働いていたという。

22歳から20年働いて、退職金は1000万円あったよということを言っていた。あと20年働いたらもっと貰えたのにって俺は言った。そしたら彼女が言う。

「アキラの真似して自営業になったんだよね」って。

へえ。何をしてるの。

すると彼女ははっきりと言わない。何かとても真実をごまかすようなことを言う。だから俺も早々に察しがついた。ネットワークビジネスだろ?

「えっ、あっ、そんな怪しい会社のネットワークじゃないんだけどねどーたらこーたら」

なんで今時ネットワークビジネスなんだよ、おばちゃんだなーwwって俺は思い切り馬鹿にした。センスがないわ。1980年代じゃあるまいし。

すると彼女が言うんだ。

「今はこれ、私のステップの一つというか、もっと大きな目標があってそのための手段としてやってるの」

「へえ。お金稼いだら何か違うことしたいってこと」

「そうなの。ネットワークビジネスはずっとやる気はなくってね。」

なんだか、気分が悪くなってしまい、頑張ってねと言ってそのまま別れた。その夜にまた俺に着信があったけど、出なかった。

 

いや、ネットワークビジネスでもなんでもいいんだ。別に。その仕組に俺は全く興味ないし、やってる奴らの精神性の幼さにもゲンナリするけど、関わらないからどうでもいい。

でもな、教えてやるよ。お前らネズミが数千人集まるとなんで不祥事だらけになるのか。

それは、お前らがやっているその作業そのものに、お前らがなんのミッションも持っていないからだよ。金を稼ぐ手段として、薬事法もへったくれもないウソを並べて、友達に夢を吹いて勧誘し、成功を煽って買い込ませるだけ。なんの地獄なんだよ。それも全部、「もっと大きな目標のため」とかいい出す。

あのさ、ソープ嬢でも恥ずかしくて言わないことを、どうしてお前らは平気で言えるんだよ。自分の目標を叶えるために、あなたからお金を奪いたいので割り切ってソープ嬢やってます、なんて言う女は1人もいないんだぜ。なぜネズミやってるやつは平気で言えるんだろね?

それが当たり前の感性をしている場所では、当然のように空気が腐る。だから、誇りもなんもなく、詐欺と横領ばかりが跋扈するんだろ。

ほら、お前の顔もずいぶんと卑屈さが染み付いてるよ。

 

似たようなことは普通の会社でもある。

世の中の仕事はほぼ全部、每日の退屈な作業を繰り返すだけだよな。作業員にしろ、事務員にしろ、経営者にしろ、全員の仕事は退屈な作業だ。

例えばスーパーマーケットの仕事だとしたら、高卒の社員も大卒の社員も、野菜の担当者は野菜を並べ、鮮魚の担当者は每日松前漬けをパックしたりホッケを並べたりする。每日每日每日每日だ。

もちろんそれがスーパーの仕事の本質であって現場なんだよね。

でもそれを10年後も20年後もやってるのかと想像したら、ゲンナリするだろうよ。大卒社員はもしかしたら本部の事務方になるのかもしれない。でもそれでも単なる事務員だしな。每日同じことをするだけ。

学歴が低めの奴らは今日も明日もバナナの重さを計って値段シールを貼る。

「バナナの売れ行きが天気によって違うのが楽しい」とかそんなことを思えないと、もう地獄なわけだよね。

そんな時、社長が取材された雑誌を全員で回覧するように、とか言われる。興味ねえよって思いながら読むと、そこには社長の発言が書いてある。

「ボクは仕事が好きだ。好きじゃなければ一日12時間も働けるわけがない」

ふざけんじゃねーよwwこのジジイがww

おまえは楽しいさ。奴隷こき使ってるからな。俺らはおまえの楽しさを演出する奴隷なんだよww

そう思うよな。俺の将来なんかこいつ想像もしてねえんだろ、バナナの値付けマンだ俺は。

そしてどんどん腐っていく。新卒で就活をしてやっと手に入れた会社だったが、先輩たちはどんより腐っている。そんなにやる気出すなよ、うぜえんだよとか言われたり。やってもやらなくても変わらねえよwって言われたり。挙げ句の果ては、遅番の奴がバナナを2ケース勝手に持ち出して近所の青果店に激安で横流ししたり。腹が減ったからってバックルームの梨を勝手に食ったり。

そしてクビになるか、辞表を出して辞めていく。辞めていった奴らは、糞会社としか思ってない。

 

ネットワークビジネスの元同僚と同じことで、その場に誇りも将来もミッションも何もなければ、どんどん腐っていくんだよ。ネットワークビジネスでせこい金を儲けて大きなことをするとか、スーパーの作業員がつまんねえから趣味の釣りに没頭して生きるとか、同じことだよね。

そのビジネスの、本質の地味な作業そのものにミッションを感じていない人間が集まれば、場が腐りきってしまう。

 

俺が昔お世話になった経営者はものすごい人で、亡くなった今も大尊敬してるんだけどね。そこをよく教えてくれた。

 

現場で単調な仕事をする人間に対して、ミッションと誇りを与えようとしていた。

その作業をすることで客にどのような貢献ができるのか、それは社会的にどんな使命があることなのか、それはどれだけプロの仕事なのか、それを定年退職までプロとして続けていくことにどれだけ誇りが持てるのか、そして、プロとしての報酬とはどんなものなのか。

それを時にはロマンチックなイメージの標語にして飾ったり、プロの仕事ぶりをかっこいい動画にして見せたり。

プロとしてプライドを持って、滅私奉公で客に貢献して、プロの報酬を受け取る現場作業員。作業員は会社の中でのステイタスも相当高く、業績によってタイトルも付与されて名誉もある。新人は成功した先輩たちにアイドルのように憧れている。

でも、やることは本当に地味で辛い作業の連続。あんなすごいステイタスを誇る先輩も、現場ではボロボロになっている。使命感がなければとてもじゃないがやりたくないきつい現場ばかりだ。

でも、多くの人間は腐ってない。そのボロボロの作業そのものに誇りを持っているからだ。その仕事で得た報酬でやる趣味に誇りを持ってるわけじゃない。後輩たちも先輩たちのライフスタイルに憧れているんじゃなく、仕事をする姿に憧れている。

作業そのもののミッションに誇りを持ってるんだよね。

 

すげえなあと思った。こんなだったら、定年退職までバナナの値付けしてやるわ。プロのバナナ師になるわ。

 

経営陣が意識不明になって、現場作業員のミッションに無関心でいれば、必ず不祥事だらけになるわな。経営陣じゃなくても、クソ上司が部下のミッションに無関心で、単なる作業員としか見ていなければ、部下はいつかお前に恥かかせてやるわって思いながらやっつけ仕事をするようになるよね。

俺だってそうだ。仕事のミッションに誰も関心を持ってもらえないのに、1人で持ち続けるなんてできない。そのうちミッションで仕事をするのは辞める。仕事は金を稼ぐ手段だとか情けないことを言い出し、会社からどれだけ不正に金を引っ張れるか考えるんじゃないかな。出張で宿泊代を誤魔化して風俗呼ぶとかな。

 

誤解を招くかもしれないけど、

末端の現場作業員の不祥事ややる気の無さは、本人のせいではなく、ミッションに無関心でいる管理職や経営陣のせいだよ。

 

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