それは卑屈なのではなく、幸せに生きていくためのスキル

 

しばらくまえにツイートしたこれ。

 

ふと思い出したんだが、かつて俺と仕事をしていた女性がこれだった。風俗嬢ではなく事務スタッフさんだったんだけどね。

彼女は31歳で、夫との人間関係がとても悪化していた。夫は妻の顔を見る度に苛立ち、家では話しかけても無視をしたり、突然キレたりね。

そして職場に来るといつも夫の愚痴を言っていた。思いやりがないとか、モラハラだとか、精神病じゃないかとか。そして決まって言う。わたしはダメ人間なんで、とか。わたしが美人じゃないから、とか。わたしが気が利かないから、とか。

 

正直、それを聞く度に、こういう女性って多いんだろうなあと痛感した。これは俺でもキレるだろうなって。ここまですっとぼけていたら、人生はハードだろうなあって。

 

夫婦関係や恋人関係でうじうじする人間に多いのは、結果から言うと「自分に矢印が向きっぱなし」だからだよね。

なぜ、この女性は夫が「なぜキレるのか」ということについて考えたりできないんだろうと思っていた。たったそれだけの思考作業なのに、なぜできないんだろうかって。

 

職場でたった数時間、每日過ごすだけで夫がキレる原因は簡単に分かったよ。彼女が夫と喧嘩になる時の夫のセリフも参照すれば、きっとこれだなって分かった。

 

彼女が結婚したのは21歳の時だったらしい。夫も同じ年の21歳。出来婚ではないからきっと恋愛が盛り上がって、一緒にいたい!っていう純粋な思いから結婚したんだと思う。すごく素敵なことだ。お互いの気持に惹かれ合うものがあったんだから。

 

でも、一つだけ、性格というか習慣の違いがはっきりあったと思う。それは、夫は生真面目で思慮深いタイプだということ。彼女は明るく社交的でいつも笑っているタイプ。夫は常に自分の身の回りを清潔にしていた。必要以上に物を置くのを嫌い、一年以上着ない服や見ない書類はすぐに捨てるのを好んだ。開いたら閉じる、出したらしまうの生活習慣がきっちり身についている男だった。

 

一方で、彼女の方は、極度に片付けが苦手だった。使ったものは出しっぱなし、言われないと自宅の掃除も一年以上しなくても平気。棚や家具の上にほこりが積もり、それが湿気を含んでぐちょぐちょになっても見えていない。夫が結婚したときに持ってきた真っ白いオーディオは、一年も経つと中華料理屋のメニュー表のように茶色にベタベタになってしまった。夫と家具屋で選んだダイニングテーブルは、ふきんで拭くこともしないので食べかすがこびりついている。ふきん自体も雑巾のようにどろどろに汚れているのでたとえ拭いたとしてもテーブルの表面に汚れた油で膜ができていく。寝室は脱ぎ散らかした服が散乱し、洗濯をしてもどういうわけか汚れが取れていない。

 

彼女の方は不潔と言うよりも、脳機能の障害レベルで片付けができないのだと思う。一緒に仕事をしていても、机の周りは散乱し書類が全く整理できていない。あるスタッフの過去三ヶ月の出勤状況と売上額の資料を見せてって言うと、それにとりかかったまま半日は用意できない。かと思うとどうでもいい弁当屋のメニューをファイルに閉じていたり。若かった俺も怒鳴りそうになったが、必死に我慢したもんだった。

彼女の車の中はまるでゴミ収集車。一度乗せてもらったんだが、どうしてこうもあらゆるところがベタベタしたり、シートに油のような大きな染みができるんだろうと不思議でならなかった。

 

彼女が言う愚痴の中にいつも出てくるフレーズがある。

「掃除しろよ!って夫がすぐに怒鳴るの。掃除してるのに。」

「夫がわたしに勝手に大掃除して、わたしのプライドはずたずたにされた」

「夫が勝手に掃除して、嫌味だった」

夫は妻任せではなく、掃除しようと頑張っている。それでも妻はすぐに不潔な状態に戻してしまう。

 

ポイントはきっとそこなんだろうと俺でも思う。夫は、家の中が綺麗になっていたら文句は何もないはずなんだ。

人が機嫌が良くなるポイントって複数は絶対にない。必ず一つなんだよ。複数あるように見えるのは、「代替ポイント」でしかない。

この夫でいえば、掃除がいまいちでも、料理が美味いとか。

掃除がいまいちでも、妻が美人すぎるとか。

掃除がいまいちでも、とても優しくて気が利くとか。

掃除がいまいちでも、お金をたくさん稼いでくる奥さんだとか。

これはポイントが複数あるわけじゃなくて、「整理整頓や掃除」っていうポイントの代替えになりうるものが複数あるだけに過ぎないわけ。

 

彼女の夫は、家の中があまりにも汚れていることに次第に恐怖心すら覚えるようになったと思う。そして妻のことを考える度に、汚れた部屋と結びつくようになり、苛立ち、そして恐怖を感じる。自分の棲家が信じられないほど汚れていて不潔で悪臭がするという現実に向き合う自分の感情が怖い、その状況を作っている妻が怖い。

そして、掃除をしてほしいと何度行っても生返事で、ろくにやろうともしない。強く言うと、プライドばかり高いのでむしろやらなくなる。そして相変わらず台所は生ゴミの臭いで充満している。

 

こうなると夫としては離婚するしかないのだが、多くの男は離婚という安易な方法は選ばない。なんとか夫婦関係を続けようとする。未熟な妻はその気持にすら気づかない。

そして「自分はクズだから」とか「自分は馬鹿だから」とか、そういうセリフで逃げようとする。そう、自己憐憫という逃げ道に。

 

違う、部屋を真剣に片付けろ。休みを一週間やるから、7日間一日5時間でいいから片付けろ。ゴミ袋50枚分くらいゴミが出るだろうから、それを処理場に持ち込んで捨ててこい。雑巾なら買ってやる。バケツも事務所のやつを持っていけ。ほうきがないならそれも買ってやる。とにかく真剣に、死ぬ気で、覚悟決めて掃除しろ。それとも俺が30万円出すから家の中まるごと掃除してゴミ捨ててくれる業者呼んでこい。30万円で足りないならもっと出してやる。とにかく、掃除しないなら人生終わると思えよ。掃除してからウジ虫みてえな愚痴言えよ。

 

夫の言うことが聞けないなら、俺が怒鳴るまでの話であって。

結局、俺が違うスタッフ2人にお願いしてバイト代を払ってやり、家の中の掃除をさせた。ゴミは2トンのアルミトラック一台分あった。2トントラックも俺がレンタカーから借りてきて用意したんだ。

結果、とても綺麗になった。

きれいになりましたで済ませたら元に戻るので、俺は彼女に行った。

 

旦那の怒りの根源は、この汚い部屋なんだよ。部屋が汚いから、何をやっても、おまえが息をしているだけでムカつくんだよ。その怒りは必ず子供にも向く。子供も不潔な部屋で平気で過ごすようになるから。そして家庭が壊れていく。

性格とかなんとかそんな問題じゃない。掃除をしないというその一点だけで、家庭なんか壊れるし、家族全員の人生が壊れてしまうってこと、腹に落とせよ。

 

でも、馬鹿なのでやっぱり分からなかっただろう。

それでも、その直後は旦那の機嫌はすこぶる良くて、あんなに行きたがらなかった外食にも家族を連れて大盤振る舞いし、妻にお洒落なコートまで買ってあげたくらいだ。

 

ほらな、だろ?

俺はそう言ったんだ。

相手の機嫌のポイントを探るっていうのは、子供の頃から鍛えていないと絶対に身につかない。苦労するのは自分だろ。自分が苦手であっても、大切なパートナーがそれで不機嫌になるのであれば変えていかなきゃならない。ポイントを押さえるだけでご機嫌になるんだったら、自分も相手も幸せだって俺なんかは思うんだが、それをパワハラとか卑屈って思う人もいるわけだよ。

だから、お前ら生きづらいし、しんどそうに不幸そうに生きてるんでしょって思う。

 

その彼女は今は50歳。

今でも部屋はゴミ屋敷のまま(笑)相変わらず夫に怒られていて、每日どこかで愚痴を言い、自分は不幸だとのたまう。

そしてありのままの自分を受け入れてくれるのがいい夫だと、50歳になっても思い込んでいる。

 

その人生じゃしんどい。

相手のご機嫌ポイントを探ることを、負けとか卑屈とか思うのであれば、もうどうにもならない。10歳の頃から絶対に鍛えていかなきゃならない能力だと本当に思う。

そうじゃなきゃ、人生もっと卑屈なまま老いていくだけだから。