理解してないなんて、絶対ないんだよ

人は、大切な人から自分のことを「正確に」理解してもらいたいと思っている。

 

彼女でも彼氏でも、夫でも妻でも、兄弟姉妹でも親子でも。自分のことを正確に、誰よりも正確に理解する「理解者」でいて欲しいと思っている。

 

自分の気持ちのこと、自分の悔しさのこと、自分の寂しさのこと、自分が受けた理不尽さのこと、自分が持つ夢のこと、自分の理想のこと、自分の快適さと不快さのこと。

大切な人だからこそ、理解してほしい。それはもしかしたら、理解してもらいたいという言葉で表した、「守ってもらいたい」という欲求なのかもしれない。

 

でもどうだろう。そういうことはありえるだろうか。

 

例えば。不倫関係を考えてみる。

結婚していると配偶者との間には、むしろ溝が広がっていくように感じるかもしれない。あれだけ好きで結婚したのに、あれだけ一緒にいて楽しかったのに、今は一緒にくらしていながら一番遠い存在に感じる、って。

だからふとしたきっかけがあると、不倫を自分に許してしまう。

不倫っていうのはいつの時代も楽しいもんだよ。最初の数ヶ月はね。妻や夫が言ってくれないことを言ってくれる。ありがとう、素敵だね、かわいいね、かっこいいね、仕事頑張ってるね、お疲れ様、おやすみ、応援してるよ、いろいろだ。セックスもそうだ。妻や夫がしてくれないことをしてくれる。妻とできないことができる。夫では感じることができないものを感じる。

そして夢中になってしまう。妻よりも俺のことを理解してくれていると思う。夫よりも自分にぴったりの存在なんだと信じ込んでしまう。二人とも思うだろう。

これは運命なんだ、って。

 

ところがそれは単なる幻想幻覚なんだって、薄々気づき始める。不倫の関係から数ヶ月も経てばそう気づき始める。

これはうちの妻じゃ言わないことだよなっていう無神経なことを言う。これはうちの旦那じゃありえないだらしなさだなって思う。

あれだけときめいていた不倫相手にげんなりしてくる。妻じゃありえない化粧の長さ、妻じゃありえない料理の下手さ、妻じゃありえない気分で機嫌をコロコロ変えるところ、妻じゃ絶対しない服や化粧品の衝動買い。

夫じゃありえない女癖の悪さ。夫じゃありえない酒の量。夫じゃありえない仕事の愚痴。夫じゃありえない金の管理のずさんさ。

そしてある日の夜。密会しようとシャワーを浴びている時にふと独り言がついて出る。

「もう別れたい」

 

そもそも、正確に相手を理解しているなんて、ほとんどありえないと俺は思う。

数値で表すことなんかできないけど、感覚としては良くて75%だろう。でも大切に思っているパートナーであれば、いくら最低でも60%は理解しているとも思う。

60%~75%の差しかないんじゃないかと。

 

いやいや違うよ、うちのヨメは俺を理解してねえし!ってムキになるかもしれないね。

たとえば、家族思いの夫がいるとする。でも妻はあまり感受性が豊かではない。家族のために尽くしてきたことを、ありがとうと言うことがない。

ある日夫は妻にLINEで言う。

妻と娘のために、奮発して低反発の高級枕を買ってきたよ、最近眠れないって言ってたじゃん、って。

妻の返事はこうだ。

「了解。」

おいおい。ありがとうとか、どうしたの?とか、もったいないよとか、いろいろ反応あるんじゃないかなと憤慨する。あの昔の不倫相手なら、「ありがとー!」って返事が来て、ハートマークも付いていただろう。なんだ、了解って。タクシー運転手の無線か。

そしてそのことも我慢できず、妻に文句を言う。俺はありがとうって言って欲しい、俺はこの家でないがしろにされている、なんて。

そしてまた妻は言う。

「そっか。じゃあ私はどうしたらいいのかな?」

だから、俺の気持ちを理解してほしいんだよって夫は言う。そして妻はまた言う。

「いつも怒ってばかりだね。奥さんは私じゃないほうがうまくいくんじゃないかなって思う。」

だからー・・・・・、大切に思ってるから枕買ったの、眠れないって言ってたから少しでもリラックスできるように高い枕買ったの、怒ってばかりじゃなくて、俺の気持ちもあ・る・の!

 

なんてね。

 

でもさ、そんな奥さんだって、60%は理解してるんだよ。お金だしてわざわざ買ってきてくれたこと。もらってきたり拾ってきたわけじゃなくて、お金払って、わざわざ店まで足を運んで、時間を費やして選んでくれたことくらい分かってるはずだよね。

だったら、了解。って返事でもいいんじゃないの。まるで職場のおっさんとLINEしてるみたいなやりとりでもさ。昔の不倫相手みたいに機嫌よく接してくれないかもしれないけど、理解はしてると思うよ。アウトラインくらいは。

 

でも違うんだ。みんな、大切な存在であればあるほど100%を欲しがる。正確に、一言一句間違わず、気持ちのブレも全部ひっくるめて、正確に理解し、言って欲しいことを言ってくれるのを期待する。

それが腹が立つのは、自分がないがしろにされているという疑念だけじゃない。

このズレ方が、もしかしたら重大な家族の問題に発展するんじゃないかと怖くなるからだ。感性のズレでお金の問題を起こすんじゃないか、教育の間違いをするんじゃないか、家族が離散してしまうんじゃないか。

そんなこと絶対ないのにね。問題があったところで、きっと大したことがない問題だよ。大切に思う家族や恋人関係の間で、そんな致命的な問題はきっと起こらない。起こらないはずなのに、無理矢理問題を起こすようなことは止めたほうがいいよね。

 

大切な人同士で、問題は何も起こらない。

大切な人同士で、理解してないなんてことは、多少あるけど致命的ではない。

 

そんなことより、その場所にただ一緒に集まってくれしていることに感謝したほうがいい。

結婚していなくても、深夜に電話したりする相手がいることに、感謝したほうがいい。

 

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