幸せになれた女、腐った女

仕事でもプライベートでも関わった女性はゆうに一万人を超えていると思う。1990年に18歳だった子から、2018年に18歳だった子まで、俺が18歳だった頃に18歳だった女から、俺が47歳だった頃に18歳だった女まで。

刺激と魅力に満ちた女もいれば、退屈と陰鬱に沈んでいる女もいた。

駅の改札口で待ち合わせると、笑顔で駆け寄って抱き着いてくれる女もいれば、無表情でゴリラみたいにうーうー言うだけの女もいた。

そんな女たちと、「女を売る仕事」をした。人聞きは悪いが、まぎれもなく女を売る仕事だった。人身は売買しないが、女心を加工して商品化して暴利をふっかけて売り切る仕事だった。女であるというのは金になる。良くも悪くも。男は商品価値は全くない。女性性を加熱して煮詰めて飴色にしてから売り出すんだ。信じられない値段で男たちは買っていく。

その金を稼げた女たちは人生を変えることができた。

でも、煮詰めることができないまま辞めていく女もたくさんいた。

 

断っておくが、ラズベリー色の世界の話だから、見てくれが不自由している女は一人もいない。見た目はみんな美女ばかりだ。それでも、なんだ。

 

女でいるというのは、辛いものだなといつも思う。

商品にできるほどの女性性を、まるで熱いストウブを素手で掴むように、あちちって言いながら運んでいる女もいれば、愛想の悪い田舎の商店みたいに、女であることが何も生み出していない女もいる。ただの性別でしかない。

まるで太陽の光を目いっぱい吸い込んだ真夏の葡萄のような余韻を残す女がいれば、セックスすることを考えただけで陰惨な気持ちにさせる女もいる。

「ねえアキラ。会える?」と深夜に電話してわがままを言う若い女もいれば、「拙者と密会か?」とか忍者みたいなメールを送って来るのでブロックした中年女もいる。

 

女性性というもののレシピを間違えると、食べないほうがいいほどの不味い料理が出来上がる。そして腐敗するスピードも速い。ちょっとだけ目線がズレてしまうだけで、ハンバーグが馬糞になってしまう。女というのは腐っても女ということは絶対になくて、腐ったら別の生命体になるんだと、夜の仕事で痛感した。

 

先日、昔スタッフしてくれていた男と話をしていたら、女のことで嘆いていた。

付き合っている彼女が正直見た目は不自由している類の顔をしていて、デブで、そいつが初めての彼氏らしい。年齢は49歳。

男はそれまで数々の武勇伝があるほどの男だったが、突然そんな女と付き合っていた。価値観が変わったんだろうと思っていた。

その彼女が男に言ったという。

「パーティに来ない?突然だけど明日」

男は言う。「パーティ?急にどうして」

聞くと随分と立派なホテルでやるという。

「何のパーティなんだよ」

女は言う。

「職場のクリパなの。ね、来てよ」

 

男はげんなりした。職場の忘年会に自分が行く必然性がないし、そもそもなんで呼びたがる?理由ははっきり分かった。

職場では、この女はきっと若い女に常にマウントを取られているんだろう。高齢で独身、未婚、ブス、デブ、意識高い系をこじらせた見栄っ張りの性格。職場の若くて可愛い女たちの格好のネタだ。

わたしだって彼氏がいるって、マウント返しをしたくてパーティに呼んで彼氏を見せつけたい、そういうことだろうと。

 

一緒に楽しみたいとか、職場を見せてあげたいってことじゃないわけな。彼氏を見せびらかしたい、マウントの仕返ししたいってことよ。

元スタッフの男は俺にそう嘆いていた。

「そいつ、別れな。おまえの女にふさわしくねえよ」俺はそう言った。そんな関係のない俺が無責任なことをいつも言わないんだが、弟のように思っているそいつのことで、つい出すぎたことを言った。

おまえには、気の利いた笑顔のかわいい女が似合うよと。変なC級グルメみたいな女は捨てろ。

「そうだな、クリスマスプレゼントも用意しない女だしな」

用意して喜ばせようという、お互いの笑顔を引き出すための健気な努力ができないんだろう。プレゼントなんてなくてもいい。メリークリスマスって一言言えるだけで違うはずだ。

 

誰だって自分のことが可愛い。それは当たり前。

でも、自分のことだけを優先しちゃだめな瞬間がある。自分のことを優先させる代わりに、それ以上に相手のことを考えていると伝え続けることが必要な時がある。

わがままでも可愛らしい女と、すこしのわがままでも許せなくなる女と。

 

まるで18歳の女のように人前でいちゃつきたがる中年女は、多くは相手に矢印は向いてない。女であることを熟成させないまま腐敗しただけだ。

相手に矢印を向けると薬になるが、自分に矢印を向けると毒薬になる。

 

パーティに呼んだその女は、自分の幸せと彼氏の幸せに矢印を向けることができず、自分の見栄と都合に彼氏を協力させることが可愛いわがままだと勘違いしていた。

わがままさえ可愛く愛おしく思える女は、みんな、矢印の方向が違う。

 

女は、たったその違いだけで人生が変わってしまう。

幸せになれた女と、そうじゃない女と両方を今も見ている。

 

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